Room 2【 Wataru Ito / Takeshi Sumi two person exhibition 】
The paper slits 伊藤航 / 澄毅
2022.11.25(Fri) - 12.11(Sun)  火曜休廊
12:00-19:00
*最終日17:00まで / The last day until 17:00

*レセプションパーティーはございません。

上:伊藤航 “ 赤と青 RED & BLUE “ ケント紙、水性顔料インクジェットプリント、木製パネル、アクリルボックス 31.3×31.3×8cm 2022(部分)

下:澄毅 “ la seine 2022 #1 “ 光沢紙 インクジェットプリント 60×40cm 2022(部分)

s+arts(スプラスアーツ)より、伊藤航と澄毅による二人展「The paper slits」の開催をお知らせいたします。

紙に切るという行為を加えることで制作される両者の作品は、動機やモチーフは全く異なりますが、共にやり直しの効かない方法で、まだ見ぬ美しさを追 求・表現しています。

伊藤航は、風景や工業製品をはじめ、あらゆるモチーフからヒントを見つけ再構成し、紙で立体作品を制作する作家です。2014年頃 より配管が整列する様子や配線が束ねられる様子に惹かれ、情景の妥当性や合理性といった「paradox」シリーズを展開し、以降は単一化したモチーフとそこから広がるミニマルな世界を表現したいと考え制作を続けています。本展では、「発想の手がかり」や「機能 美に潜むユーモラス」をテーマに制作された作品を発表いたします。

「発想の手がかり - 写真と立体を組み合わせた今回の作品は自身が撮影した写真をアイディアの起点としている。関係ないように思 える風景にも共通点は多く、制作する上では重要である。作品の起点をあえて晒すことで、妥協点や主張がはっきり表れるのではない かと考えた。色がなく機器的な要素が多いこれまでの作品も元を辿ると植物や自然現象が発想の手がかりになることがある。

機能美に潜むユーモラス - 歯車という、本来機械の内側にある機能だけのものにも、意図された美しさがあるのではないだろうか。 機能という必然性から生まれる風景や事象に惹かれるのは、人工的な世界に潜むユーモラスな美しさを感じるからではないかと思う。 あえて設計図は作らず、紙というやり直しの効かない素材を扱うことで瞬間的に偶然現れる美しさを探し求めていく。重なるイメージ やその更新の途中で埋もれてしまう形もあるが、制作にかける時間経過の現れであり、ひたすらに積み重ねていく作業や、逆に瞬発力 を要する作業が、そこには確かに存在している。具体的なものをモチーフとしながら、集積されていく抽象的な風景を構築していくこ とを目指している。」--- 伊藤航

これまで白色の紙を使うことで、光と影のような明暗と、無数のパーツで構築される、精巧で無機質なイメージの作品が印象的でした が、今回は、写真や有機的なモチーフを取り入れた作品も加わり、新たな表現の変化にも注目したい作品群となりました。

澄毅は、自らの身体、特に指先の感性を重視し、写真がプリントされた紙に波光のような切れ込みを入れることで作品を制作してい る作家です。「かつて、そこに、あった」という写真の持つテーゼを愛し、祖父が見た広島原爆の光を見出すことを根底に制作を続けて います。近年では、作品制作の他、小説などの書籍の表紙への作品提供や、音楽家とのコラボレーションを行うなど、精力的に自身の 活動の幅を広げています。

「カメラを持ち、レンズを覗き、シャッターを押す。現れてきた世界を見るたびに私が思うのは、“本当に見たいものは映らない”という 真実だ。その“見えない世界”を見出す為に私は写真を支持体にして作品を制作している。写真がプリントされた紙に直接カッターでス リット(切れ込み)を入れる。異常な密度で何百もの数のスリットを入れていく。そうして出来上がった作品に光が反射すると波光が現 れる。後ろから光を透すと髪の毛のような生命の糸のようなものが現れる。そうした光のラインが写真の世界と合わさった時、“見えな い世界”の一端が少しだけ見えるように感じられるように思える。それは人の記憶や願望と強く結びつくことで、それぞれの人によって 違うものだろう。しかし光が人にとって不可欠な以上、この感覚は多くの人に共有できるものであり、美しいものだと信じている。見え ないはずの世界のドアを開け続けていくために私はスリットを入れ続けていく。」 --- 澄毅

澄の撮る写真はどれも、不思議で曖昧な雰囲気を醸し出しています。多重露光の影響により時の経過を感じさせるにも関わらず、そこ に切れ込みや複数の穴を入れていくことにより、その隙間から差し込む光は流れていた時を覆い、その情景の向こう側に垣間見える一 瞬を捉えているかのように見受けられます。作品を通して澄が作り出す光からは、木漏れ日のように柔らかく優しいものではなく、そこ に意思が宿っているかのような強いエネルギーを感じます。

今回は、各々の作品の他、本展のために作られた伊藤と澄によるコラボレーション作品も発表いたします。無数のスリットにより作ら れる造形、そこから生まれる光と影をも作品に取り入れ自身の求める美を追求する両者の姿勢に、観る者はロマンさせ憶えることでし ょう。これを機に伊藤航と澄毅による二人展を是非お楽しみください。


伊藤 航 Wataru Ito
1981 埼玉県生まれ
2011 東京藝術大学美術学部工芸科漆芸専攻卒業

個展
2021 「歯車のリズム」lighthouse gallery( 東京 )
2019 「Camouflage」ex-chamber museum ( 東京 )
2018 「segments」ex-chamber museum ( 東京 )
2017 「paradox 10×10centimeter squares」ex-chamber museum ( 東京 )
2016 「paradox angle:5°」ラディウム - レントゲンヴェルケ ( 東京 )
2014 「出現する余白」Gallery Gigi ( 江ノ島 )
2012 「伊藤航 ~ 紙・かみ・カミ ~」アンデルセン公園子ども美術館 ( 船橋 )
2011 「Vegetables with feelings」ギャラリー元町 ( 横浜 )
2011 「airport of the imagination」、Gallery 58( 東京 )
2010 「paper sculpture」ギャラリー元町 ( 横浜 )

グループ展
2017 「THE ドラえもん展 TOKYO2017」森アーツセンターギャラリー ( 東京 )
2016 「Contemporary Cityscapes」六本木ヒルズ A/D ギャラリー ( 東京 )
「半肆半」スパイラルガーデン ( 東京 )
2015 「Quest -selected by Masaharu Makuuchi / ex-chamber museum」
六本木ヒルズ A/D ギャラリー ( 東京 )
2014 「縹渺 ~ 巧術其之伍」スパイラルガーデン ( 東京 )
2013 「w. Wataru ito, Tetsuya Ono」六本木ヒルズ A/D ギャラリー ( 東京 )
2013 「韜晦 ~ 巧術其之肆」スパイラルガーデン ( 東京 )
2012 「蠱惑 ~ 巧術其之参」スパイラルガーデン ( 東京 )
2011 「手練 ~ 巧術其之貳」スパイラルガーデン ( 東京 )

受賞歴
平山郁夫賞、日本ペイント賞、三菱地所賞

作品収蔵
ふなばしアンデルセン公園子ども美術館、文化シャッター


澄 毅 Takeshi Sumi
1981 京都府生まれ
2004 明治大学文学部文学科ドイツ文学専攻 卒業
2009 多摩美術大学美術学部情報デザイン学科情報芸術専攻 卒業

個展
2022 「ひかり•ゆび・自然」法然院(京都)
「ART WORKS」京都写真美術館(京都)
「PRINTEMPS」ギャラリ想(名古屋)
2021 「PRESENT」 Spectrum gallery(大阪)
「Belle lumière」 あべのハルカスアートギャラリー (大阪)
「petit à petit」ギャラリ想(名古屋)
「halo」 BOOK AND SONS (東京)
2020 「Les Fantaisies」Galerie Grand EʼTerna(パリ)
2019 「指と星」gallery Main(京都)
「Fingers and Stars」Galerie Grand EʼTerna(パリ)
2016 「Existence is beyond thereflection and transmitted light」新風館 by gallery main (京都)
2015 「Lumière et vous」Galerie Grand E'Terna(パリ)
2012 「空をみる」Overland Gallery(東京)
「空に泳ぐ」Port Gallery T(大阪)
2011 「Light is blank 光の空白」blanClass(横浜)
  「光」Port Gallery T(大阪)
2010 「メテオ」企画ギャラリー・明るい部屋(東京)

主なグループ展
2022 「Nii Fine Arts 10周年記念展-東京-」3331 Art Chiyoda (東京)
「等伯の桜と春の濃淡」まるごと美術館 / 妙蓮寺 (京都)
2021 「3331 Art Fair」 Nii Fine Arts / 3331 Art Chiyoda (東京)
2020 「世界と溶け込むに至るまで」Spectrum gallery(大阪)
「東京好奇心2020 渋谷」Bunkamura (東京)
「galleryMain archive project #1」gallery Main (京都)
2019 「Le Japon」 Orangerie-Espace Toulière(Verrires le Buisson・フランス)
2018 「Shibuya - Curiosité de Tokyo」Mairie du 4e (パリ)
2014 「TOKYO SHIBUYA LOVERS PHOTOGRAPHERS」高松市塩江美術館(高松)

アートフェア
2017 fotofever(パリ)/ gallery Main
2016 affordable art fair(ニューヨーク)
2012 no found photo fair(パリ)/ リブロアルテ 2012 TOKYO PHOTO 2012(東京)/リブロアルテ

コレクション
2013 agnes b.

出版
2019.09 「指と星」 リブロアルテ
2012.10 「空に泳ぐ」 リブロアルテ

作品提供
2022 西田剛著「恋の終わりに」表紙(幻冬舎)
  李琴峰著「透明な膜を隔てながら」表紙(早川書房)
2021 森美樹著「神様たち」表紙 (光文社)
2020 ジェイアール京都伊勢丹の20周年リニューアルグランドオープン用ビジュアル
李琴峰著 「ポラリスが降り注ぐ夜」表紙 (筑摩書房)
「群像第75巻第1号」表紙 (講談社)
2019 真藤順丈著 「ビヘイビア(電子雑誌 : カドブンノベル)」(KADOKAWA)
2018 島本理生 「匿名者のためのスピカ(文庫版)」表紙(祥伝社)