Room 1【 Naho Ide solo exhibition 】
井手菜穂 ー整うまでの、ー
2022.10.14(Fri) - 10.23(Sun) 会期中無休
12:00-19:00
*最終日17:00まで / The last day until 17:00
*レセプションパーティーはございません。
s+arts(スプラスアーツ)より、井手菜穂 個展「整うまでの、」の開催をお知らせいたします。
油絵具、オイルパステルにカルサイトやシェル等の素材を使い、独自のマチエールを構築しながら風景画を描く井手菜穂。一見抽象画にも見える彼女の作品は、ハイキングで山に登った先にある自然や、これまで読んできた小説などから思い描く風景です。“見える風景を忠実に描くことをしない「風景画」”と作家自身が言うように、それらは井手の中にある記憶や想像、希望が入り混じり、鮮やかな色彩に花や木々のある風景へと形成されています。近年では、風景の一部として視点をクローズアップし、表情や触感がより感じられるような表現にも挑戦しています。素直に浮かんだイメージに寄り添うことで、エネルギーが感じられるような作品を目指します。
「人には様々な眼があります。直接、『ミル』ことも大切ですが私の中にある記憶や想像、希望が入り混じっている、或いは読んできた小説の中での風景が色や形となり絵として出来ています。その絵を通して、今は小さくてもいずれ大きなエネルギーの源になれる仕事をしていきます。絵を表情とし、空間的・時間的な広がりやエネルギーの大きさを表現できないか?また、反対にその中のある小さな部分も想像して描くことができないか?それがどういう表現になるか、楽しみながら描いています。」--- 井手菜穂
この世の中で自身が作品を制作できる平和な境遇にいることに重きを置き、その幸せを十分感じられるよう、楽しむことを制作の原動力としているのが、井手の制作への姿勢と言えるでしょう。
昨年に引き続き、主に花を通して社会の深層を描く試みの本展では、特に雨をモチーフにしている作品が多く見受けられます。雨はしばしば災害をもたらす現象にもなりえますが、「雨が降ると全てが整う。雨上がりは物事がきれいに見える。」という井手の言葉にあるように、嫌なことを流し、物事を整えてくれる役割もあると彼女は考えます。力強くも繊細な雨の気配を含みながらも、井手自身の感性、心理などを反映させるように描かれた様々な花を同じ空間で展示することで、そこから垣間見える深層を探ります。また、これまでの井出作品の特色の一つとも言える、カルサイトやシェル等のマチエール素材を今回はあえて使わず、油彩のみで濃淡を表現した作品も多く見られ、より彼女の描きたいエネルギーが直に伝わってくるようにも感じられます。
これを機に、井手菜穂の新作群を是非ご高覧ください。